余市の種類や味わい、蒸溜所について徹底解説。余市の魅力に迫る。

「日本のウイスキーの父・竹鶴政孝」がニッカウヰスキー第一の蒸溜所として選んだ北海道・余市。余市にはスコットランドのような冷涼で湿潤な気候や良質な水、豊富なピート層などの環境があります。

そんな余市で、ウイスキーは北の風土が育むものという信念のもとで、ウイスキーづくりの理想の地として、ニッカ第一の蒸溜所として1934年に建設されたのが「余市蒸溜所」余市蒸溜所ではスコットランドの伝統的な製法である石炭直火蒸溜を採用しており、力強く重厚なモルト原酒を造り出しています。石炭直火蒸溜は現在行っている蒸溜所はかなり少なく、世界でも希少な製法となっています。

大麦の乾燥にピートを使用し、蒸溜は石炭直火蒸溜によって造られる「余市」は、スモーキーでピート感が強く、力強い香りや味わいが特徴です。本記事では、余市の種類や味わい、蒸溜所について徹底解説します。

この記事を書いた人

ケン

・元バーテンダー

・年間で飲むウイスキーは100杯以上

・ラガヴーリンをこよなく愛する

・ケンのプロフィールはこちら

Instagramにて、素敵なBarやウイスキーレビューを配信中!


目次

余市とは

画像引用:https://www.asahigroup-holdings.com/

余市とは、北海道余市町に位置する余市蒸溜所で造られるシングルモルトウイスキーです。余市はニッカウヰスキーが製造し、アサヒビールが販売しています。この余市蒸溜所は、ニッカウヰスキー初の蒸溜所であり、豊かな自然環境に囲まれた中で、伝統的な製法を守り続けています。周辺地域では大麦やピート(泥炭)の生産が行われ、アルコール発酵に適した酵母や寒冷な気候、そして良質な水といったウイスキーづくりに理想的な条件が揃っています。

シングルモルト余市は、ピーティでスモーキーな力強い個性が特徴で、国内外から高い評価を受けています。このウイスキーの特筆すべき点の一つは、伝統的な「石炭直火蒸溜」という方法を用いていることです。この手法は、ウイスキーに力強い風味を与え、ピートの焚き火から生まれるスモーキーな香りが際立ちます。

また、余市のウイスキーは、ピート香に加えて、バランスの取れた甘みも感じられるのが特徴です。スモーキーでありながらもフルーティーさや豊かな甘みが絶妙に調和し、複雑ながら飲みやすい味わいで、多くのウイスキーファンに愛されています。さらに、余市のモルト原酒は他のニッカウヰスキーのブレンドにも使用されており、代表的なブレンデッドモルト「竹鶴」や、新たに発売されたブレンデッドウイスキー「ニッカフロンティア」などでも、余市のモルトがキーモルトとして重要な役割を果たしています。

余市の歴史

竹鶴政孝のスコットランド留学

画像引用:https://www.nikka.com/

ニッカウヰスキー創業者である竹鶴政孝は、1918年12月に日本からスコットランドへ渡り、現地でウイスキー造りを学びました。当時、日本にはウイスキー製造に関する技術やノウハウがほとんど存在していなかったため、竹鶴は本場スコットランドの伝統的なウイスキー造りを学ぶことを決意したのです。

竹鶴はグラスゴー大学で化学を学びながら、1919年にスペイサイドのロングモーン蒸溜所でモルトウイスキーの製造実習を行いました。また、ボーネスにあるジェームス・カルダー社工場では、グレーンウイスキーの製造についても実習を重ねます。さらに、1920年中頃には、キャンベルタウンにあるヘーゼルバーン蒸溜所で再度モルトウイスキーの製造実習を行い、ブレンド技術の習得にも努めました。

この期間中に、竹鶴が学んだウイスキー製造の工程すべてを記録したものが、後に有名となる「竹鶴ノート」です。2冊にわたるこのノートは、日本のウイスキーづくりに大きな影響を与え、その発展に貢献しました。ある時、かつての英国首相がスピーチの中で竹鶴に向けて、「頭の良い日本の青年が、1本の万年筆とノートでウイスキーづくりの秘密を盗んでいった」とユーモア交じりに語った逸話も残っています。

余市蒸溜所の設立

1934年、竹鶴は北海道の余市町に余市蒸溜所を設立しました。余市町が選ばれた理由は、多湿冷涼な気候や自然環境がスコットランドに似ていたためです。スコットランドのように冷涼な気候がウイスキーの熟成に最適であり、近隣の豊富な水源やピート(泥炭)の存在も、彼の理想的なウイスキー造りには不可欠でした。また、余市町は海に面しており、海風が熟成中のウイスキーに影響を与えることも重要な要素とされました。

さらに、余市近辺は、リンゴの産地でありウイスキーが出来上がるまでの資金源となったリンゴジュースの原料が確保しやすかったことなども余市に蒸溜所を建てる理由の一つとなりました。蒸溜所が設立されたのは1934年ですが、初めの2年はウイスキーを造るための資金がなかったため、社名は「大日本果汁」でリンゴジュースの生産を行っていました。そして2年後の1936年にウイスキーづくりを開始しました。

戦後の成長と国際的な評価

戦後、余市蒸溜所は徐々にその名声を高め、特に1950年代から1960年代にかけて、ニッカウヰスキーは国内市場での人気を確立しました。1970年代から1980年代にかけては、日本のウイスキーが国際的に評価されるようになり、余市蒸溜所もその中心的存在として大きな役割を果たしました。そして、創立55年目となる1989年には、シングルモルト余市がリリースされ、竹鶴政孝の伝統的な製法を守りつつ、品質の高いウイスキーを造り続ける姿勢が評価され、世界的なコンペティションでも数々の賞を受賞しています。

特に、2001年に「ウイスキーマガジン」において「シングルカスク余市」が「ベスト・オブ・ザ・ベスト」で最高得点を記録したことは、日本のウイスキー業界にとって大きな出来事でした。この出来事をきっかけに、余市ウイスキーは世界中のウイスキー愛好家から注目されるようになり、日本のウイスキー全体の地位向上にも大きく貢献しました。

現在も余市蒸溜所は、竹鶴政孝の理念と伝統を守りつつ、革新を続けています。余市で生み出されるウイスキーはスコットランドの影響を受けつつも、独自の個性を持ち、国際的な舞台で高く評価され続けています。

余市の製法

画像引用:https://www.nikka.com/

特徴的な製法1:製麦でピートを使用

余市の製造工程では、製麦時に大麦を乾燥させる際にピートを燃料として使用します。ウイスキーは製麦、糖化、発酵、蒸留、熟成といった様々な工程を経て造られますが、製麦はその最初の重要な工程です。この段階で大麦を乾燥させ、ピートの煙でスモーキーなフレーバーを麦芽に移すことによって、ピーテッド麦芽が生まれます。余市蒸溜所では、ニッカのピート畑で定期的に採取されたピートを使用しています。ピート畑は石狩川の河口付近にあり、地元産のピートを炉で焚くこともあります。余市蒸溜所のウイスキーは、このピートのスモーキーさが顕著であり、重厚な味わいが特徴です。

特徴的な製法2:石炭直火蒸溜

余市蒸溜所の最大の特徴は、伝統的な「石炭直火蒸溜」です。余市蒸溜所には初留釜4基と再留釜2基のポットスチルがありますが、初留釜では現在も伝統的な石炭直火蒸溜が行われています。石炭の火で直接加熱することで、強い熱を与え、蒸気加熱よりも熱ムラが生じることで力強く厚みのあるウイスキーを造り出します。現在ではほとんどの蒸溜所が蒸気加熱を採用しているため、この方法を維持している蒸溜所は極めて珍しいです。

特徴的な製法3:ポットスチルの形状

画像引用:https://www.asahibeer.co.jp/

余市蒸溜所では、蒸溜に使われるポットスチルは、下向きのラインアームを持つストレートネック型が採用されています。このストレート型のポットスチルは、外気に触れる面積が他のタイプよりも小さいため、アルコール以外の成分が多く残り、蒸溜過程で複雑で豊かな味わいが原酒に与えられます。さらに、ラインアームが下向きであることにより、上向きのものに比べて重い成分が蒸気中を通りやすくなり、これがウイスキーに重厚な風味をもたらす要因となります。

余市のラインナップ

シングルモルト余市

基本情報
画像引用:https://www.asahibeer.co.jp/
銘柄余市
原産地日本
アルコール度数45%
容量700ml
種別シングルモルトウイスキー
熟成樽バーボン樽、シェリー樽、新樽
熟成年数ノンエイジ
仕込み水余市川の伏流水
ブラックニッカ
¥7,998 (2025/01/06 04:31時点 | Amazon調べ)
\楽天ポイント4倍セール!/
楽天市場

シングルモルト余市のスタンダードボトルは、ノンエイジ(NV)ですが、これを飲むことで余市の全体像をつかむことができます。過去には余市10年、余市12年、余市15年、余市20年といった年数表記のボトルも販売されていましたが、現在のラインナップではノンエイジの「シングルモルト余市」のみが提供されています。

「シングルモルト余市」は、力強いピート香としっかりとしたスモーキーな風味が特徴です。グラスに注ぐと、豊かなピート香に加えて、熟した果実やチョコレートのような甘さが漂い、奥深い香りが広がります。口に含むと、焦がしたオークの風味や麦芽の甘みが感じられ、スモークとフルーティーさが絶妙に調和しているのを楽しむことができます。余市の冷涼な気候でゆっくりと熟成されることで、複雑で深みのある味わいが生まれ、余韻にはスパイスや樽由来のウッディなニュアンスが心地よく残り、長く続くのが特徴です。

おすすめの飲み方はストレートです。余市ならではのスモーキーで独特な重厚感のある味わいを、じっくりと堪能することができます。また、ストレート以外であればハイボールも非常におすすめです。余市の甘さと爽快感のある炭酸水が見事にマッチし、まるでハイボールのために作られたかのような美味しさを楽しむことができます。

テイスティングノート

赤みが差した琥珀色

香り

やわらかな樽熟成香と麦芽の甘さ、豊かな果実香の調和、穏やかで心地よいピート

味わい

オークの甘さとしっかりとしたピートの味わい、麦芽の香ばしさとオレンジのような果実の調和

余韻

あたたかなオークの甘さとスモーキーさがゆっくりと持続する。

ブラックニッカ
¥7,998 (2025/01/06 04:31時点 | Amazon調べ)
\楽天ポイント4倍セール!/
楽天市場

【新発売】余市のヘビリーピーテッド原酒をキーモルトに採用したウイスキー

画像引用:https://www.nikka.com/

ニッカフロンティアとは、ニッカウヰスキーの創業90周年を記念して造られ、2024年10月1日に新発売されたブレンデッドウイスキーです。このウイスキーは、伝統と革新を融合させた新しい一歩を象徴するものとして、多くの注目を集めています。

それでは、ニッカフロンティアがどのようなウイスキーなのか、詳しく説明していきます。まず、基本的な概要は以下の通りです。

基本概要
ニッカ フロンティア
画像引用:https://www.asahibeer.co.jp/
銘柄ニッカフロンティア
原産地日本
アルコール度数48%
容量500ml
種別ブレンデッドウイスキー
熟成年数ノンエイジ
キーモルト-余市のヘビリーピーテッドモルト原酒
参考小売価格(税抜)2,200円
ブラックニッカ
¥2,200 (2025/01/05 22:15時点 | Amazon調べ)
\楽天ポイント4倍セール!/
楽天市場

このウイスキーには、特に4つのこだわりがあります。それぞれのこだわりについて詳しく見ていきましょう。

特徴1:キーモルトが余市蒸溜所のヘビリーピーテッドモルト原酒

今回、「ニッカフロンティア」に使用されているキーモルトは、この余市蒸溜所のヘビリーピーテッドモルト原酒です。このモルト原酒は、モルト(大麦)を乾燥させる際に豊富なピート(泥炭)を使用することで、独特のスモーキーな風味を実現しています。こうした重厚かつスモーキーな原酒が、「ニッカフロンティア」の骨格をしっかりと支えています。

特徴2:ハイボールにしても割り負けないアルコール度数の高さ

ウイスキーは通常、樽出し後に水を加え、40~43%程度のアルコール度数に調整するのが一般的です。しかし、ニッカフロンティアでは加水量を抑え、48%という高めのアルコール度数に仕上げられています。

これにより、ウイスキー本来の風味をよりしっかりと楽しむことができ、ハイボールにしても味が薄まることなく、力強い風味を保ったまま楽しむことができます。

特徴3:モルト比率が通常のブレンデッドウイスキーよりも高く、個性が強い

ニッカフロンティアは、ウイスキーの区分ではブレンデッドウイスキーに分類されます。ブレンデッドウイスキーでは通常、モルト原酒とグレーン原酒がブレンドされますが、一般的には「グレーン原酒>モルト原酒」の割合で調合されることが多いです。しかし、ニッカフロンティアではモルト原酒の比率が51%となっており、「グレーン原酒<モルト原酒」という逆の構成になっています。

グレーン原酒は様々な穀物を原料としており、クセが少なくまろやかな味わいで、大量生産が容易な特徴があります。一方、モルト原酒は大麦のみを原料にし、蒸溜所の個性が強く反映されやすいものが多く、通常は風味が豊かで力強いのが特徴です。そのため、ニッカフロンティアではモルト原酒の比率を高めることで、より一層モルト原酒の個性的な風味を堪能できるウイスキーに仕上がっています。

原酒の種類などについて詳しく知りたい方は以下の記事をご覧ください。

特徴4:ノンチルフィルタード

ニッカフロンティアは「ノンチルフィルタード」を採用しており、冷却ろ過の工程を行わない製法を採用しています。

通常、熟成を終えたウイスキーを樽から出す際、温度が低い状態ではうまみ成分を含む沈殿物が生じます。多くのウイスキーでは、ボトリング時に見た目をよくするために、この沈殿物を冷却してろ過する工程を挟みます。

しかし、ニッカフロンティアではこの冷却ろ過を行わず、常温でろ過し、ボトリングします。この製法により、ウイスキー本来のうまみが損なわれず、より濃厚でダイレクトな味わいを楽しむことができます。

テイスティングノート

綺麗な琥珀色

香り

リンゴ、バナナ、オレンジピール、バニラ、スモーキー、オーキー、アルコール感は少ない

味わい

スムース、バニラ、リンゴ、ビター、オーキー、スモーキー

余韻

バニラ、スパイシー

ブラックニッカ
¥2,200 (2025/01/05 22:15時点 | Amazon調べ)
\楽天ポイント4倍セール!/
楽天市場

まとめ

今回は余市を特集しました。余市は、日本のウイスキーの父・竹鶴政孝が理想の地として選んだ余市町に建てた余市蒸溜所で造られる、スコットランドのウイスキーにも負けない個性を持つシングルモルトウイスキーです。

余市蒸溜所では、職人の匠の技術が要される石炭直火蒸溜を今も守り続けており、竹鶴が築いた伝統が今も余市に反映されています。

また、余市蒸溜所では無料の見学ツアーも開催しています。このツアーでは、シングルモルト余市をテイスティングすることができ、余市蒸溜所についてさらに詳しく知ることができます。ご興味のある方は、以下の公式ホームページから詳細をご確認ください。

それでは良いウイスキーライフを。

希少な国産ウイスキーや世界のレアウイスキーを定価で手に入れるなら
東急クレジットカード会員限定のウイスキー抽選がおすすめです!

  • 白州、響、竹鶴などの希少なジャパニーズウイスキーの抽選販売に参加可能
  • スコッチやバーボンなどのレアウイスキーも抽選販売で入手可能
  • 基本還元率は1%で、東急線PASMO定期券の購入や東急線の乗車で還元率3%
  • PASMOにオートチャージ可能
  • 2025年1月31日まで最大12,000ポイントプレゼントキャンペーン実施中
  • 年会費は初年度無料。次年度以降は1,100円。

初年度は年会費無料のため、1年以内に解約する場合であれば、レアウイスキーの抽選に無料で参加し、白州や山崎の年数ものを定価で手に入れることが可能です!

さらに、2025年1月31日まで最大12,000ポイントが獲得できるキャンペーンを実施中で、非常にお得なカードとなっています!

この記事が気に入ったら
フォローしてね!

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次