スコットランドのウイスキーは、その地域ごとに独自の特徴を持っていますが、特に「ハイランドモルト」は、その多様性と深い味わいで知られています。
ハイランド地方は、スコットランドで最も広大なウイスキー生産地域であり、その自然環境、気候、伝統的な製法が見事に調和したウイスキーを生み出します。
ハイランドモルトは、モルトの甘さやフルーティーさ、時には海風のような塩味まで、さまざまなフレーバーが楽しめるため、ウイスキー愛好者にとって魅力的な選択肢です。本記事では、そんなハイランドモルトの魅力を深堀りし、2025年最新のおすすめ銘柄9選を紹介します。
ハイランドモルトとは


ハイランドモルトは、スコットランドのハイランド地方で製造されるシングルモルトウイスキーを指します。スコットランドには地域ごとのウイスキーの特徴があり、ハイランド地方で作られるものはその広大なエリアを背景に、多様性に富んだフレーバーを誇ります。
スコットランドのモルトウイスキー生産地域の中で最大のエリアを占めるハイランド地方には、有名な蒸留所が数多く点在しており、それぞれ独自の個性を持っています。
ハイランド地方とは
ハイランド地方は、スコットランドを北部と南部で分ける「ハイランドライン」の北側に広がる広大な地域です。現在では、東のダンディーと西のグリーノックを結ぶ想定線の北がハイランド、南がローランドと分類するのが一般的です。
この地域は、スコットランドの中でも特に雄大な自然景観が特徴で、険しい山々、広がる渓谷、美しい湖や河川が点在しています。この豊かな自然環境は、ウイスキー作りにおいて重要な要素となります。蒸留所が使用する水源は、ハイランドの清らかな水流や地下水から得られ、その純度とミネラルバランスがウイスキーの味わいを形成します。
また、ハイランド地方は気候も地域によって異なり、北部の寒冷な気候、海沿いの湿潤な風、内陸の乾燥した空気など、多彩な条件がウイスキーの熟成に影響を与えています。
個性は蒸溜所ごとにかなり異なる
ハイランドモルトの最大の魅力は、その多様性にあります。この地域は広大であるため、各蒸留所が位置する場所によってウイスキーの味わいが大きく異なります。
一般的に、ハイランドモルトはリッチで複雑な味わいを持つと言われますが、内陸部で作られるウイスキーはモルトの甘さやフルーティーさが強調される一方で、海沿いで作られるウイスキーは塩味や海風を感じさせるニュアンスを持つ傾向があります。
代表的なハイランドモルトとしては、グレンモーレンジィのような華やかでエレガントなものから、アバフェルディのようなハチミツのような甘さが特徴のものまで、飲む人の好みに応じて多彩な選択肢があります。
ハイランドモルトは、初心者にも経験豊かな愛好家にも楽しめるスコットランドウイスキーの豊かさを体現しています。
ハイランドモルトおすすめ銘柄9選
それでは、ハイランドモルトのおすすめを9つご紹介します。
グレンモーレンジィ


「グレンモーレンジィ」は、スコットランドのハイランド地方に位置する世界的に有名なシングルモルトウイスキーブランドです。その名前はゲール語で「大いなる静寂の谷」を意味し、静かで美しい自然環境の中で生まれるウイスキーの高い品質を象徴しています。同蒸留所は1843年に設立され、以来、革新的な技術と伝統的な手法を融合させたウイスキーづくりで知られています。
グレンモーレンジィの最大の特徴の一つは、蒸留器の高さです。一般的な蒸留器よりも背が高い「キリンの首」と呼ばれる形状の蒸留器を使用しており、この構造によって軽やかで繊細な風味を持つスピリッツが生み出されます。
また、原料となる水には、蒸留所近くを流れるターロギー泉の軟水が使用されており、これも独自の味わいに寄与しています。
さらに、グレンモーレンジィは熟成に使用する樽にも非常にこだわっています。アメリカンオークのバーボン樽を主に採用しており、それぞれの樽は熟練した職人の厳しい管理のもとで選ばれます。
また、ウッドフィニッシュと呼ばれる技術を用いて、熟成の最終段階で異なる種類の樽にウイスキーを移し替えることによって、複雑で奥深い味わいを生み出しています。




クライヌリッシュ


「クライヌリッシュ」は、スコットランドのハイランド地方、北海に面したブローラの町に位置するクライヌリッシュ蒸留所で生産されるシングルモルトウイスキーです。その名はゲール語で「緩やかな斜面」を意味し、豊かな自然環境と独特の風味で知られるウイスキーを生み出しています。
クライヌリッシュの最大の特徴は、その風味にあります。シングルモルトでありながら、わずかにピートの効いたスモーキーなニュアンスと、豊かなワックスのようなオイリーな質感が調和した独特の味わいを持っています。
この「ワックス感」は、クライヌリッシュが他のウイスキーと一線を画す大きな要因であり、蒸留所の設備や製造プロセスに起因すると言われています。また、レモンやリンゴのような爽やかなフルーツのアロマと、蜂蜜やバニラのような甘さが重なり合い、バランスの取れた複雑な風味を楽しむことができます。
クライヌリッシュ蒸留所は、ディアジオ社の傘下にあり、同社が展開する「クラシックモルト」シリーズの一つとして紹介されています。また、この蒸留所で生産される原酒はブレンデッドウイスキーにも使用されており、とりわけ「ジョニーウォーカーゴールドラベル」に欠かせない重要な原料としても知られています。


トマーティン


「トマーティン」は、スコットランドのハイランド地方に位置する蒸留所で生産されるシングルモルトウイスキーです。その名はゲール語で「ネズの木の茂る丘」を意味し、豊かな自然と調和した環境の中で生まれるウイスキーは、多くの愛好家に親しまれています。
トマーティンの特徴は、非常に滑らかで親しみやすい味わいにあります。フルーティで軽快な香りが、トマーティンならではの柔らかな口当たりと調和し、初心者から上級者まで幅広い層に支持されています。
熟成には主にアメリカンオークのバーボン樽が使用されており、バニラや蜂蜜のような甘さとともに、フレッシュなリンゴや洋梨のニュアンスが感じられるのが特徴です。
トマーティン蒸留所は、一時期世界最大規模の蒸留設備を持つ蒸留所として知られ、多くの原酒がブレンデッドウイスキーに供給されていました。しかし、近年ではシングルモルトブランドとしての地位を確立し、その品質の高さで注目を集めています。
また、蒸留所に従業員用住宅を整備した蒸留所としても知られ、現在も7~8割程度の従業員が社宅に住んでいるとのことで、地域社会と共生しながら発展してきたことも特筆すべき点です。


オールドプルトニー


「オールドプルトニー」は、スコットランドのハイランド地方にあるウィックという港町で生産されるシングルモルトウイスキーで、「海のモルト」という異名を持つほど潮の香りを持つことで知られています。
同蒸留所は1826年に設立され、スコットランド本土の最北端に位置する蒸留所の一つとして、長い歴史を誇っています。港町ならではの海風や塩気を感じる風味が、オールドプルトニーを独特な存在へと際立たせています。
オールドプルトニーの最大の特徴は、その味わいに現れる潮のニュアンスです。熟成中に海風の影響を受けるため、塩気を伴うミネラル感や、潮風を感じさせるような独特のアクセントが加わります。また、シングルモルトウイスキーとしての基本を忠実に守りながらも、柔らかい甘さやスパイシーさ、熟成樽由来のバニラやキャラメルの風味がバランス良く重なり合い、深みのある味わいを形成しています。
オールドプルトニー蒸留所の設備もユニークで、蒸留器のネックがスワンネックがないT字シェイプ型という、独特な形状をしていることが、味わいに影響を与えています。この形状により、蒸留時にスピリッツが何度も還流するため、重層的で複雑な味わいが得られます。


グレンドロナック


「グレンドロナック」は、スコットランドのハイランド地方に位置する蒸留所で生産されるシングルモルトウイスキーで、そのリッチで濃厚なシェリー樽熟成の風味が特徴です。グレンドロナックは、ザ・マッカランやグレンファークラスに並び、シェリー樽熟成の名門として知られています。
1826年にジェームズ・アラーディスによって設立されたグレンドロナック蒸留所は、蒸留所が所在する谷を流れる「ドロナック川」にちなんで名付けられています。
グレンドロナックのウイスキーは、その熟成過程で主にスペイン産のオロロソシェリー樽やペドロヒメネス(PX)シェリー樽を使用することで知られています。
この伝統的な手法により、ドライフルーツやスパイス、チョコレート、ナッツといった濃厚で奥深い味わいが引き出されます。特に、ダークチェリーやブラックカラントのような果実味と、樽由来のトーストしたオークのニュアンスが見事に調和し、一口飲むごとに豊かな余韻が続きます。
グレンドロナック蒸留所のもう一つの特徴は、そのクラシックな製造方法にあります。伝統的な石炭直火式蒸留が行われていた時代の手法を一部維持し、特に長い発酵時間と銅製ポットスチルによる蒸留が、スムーズでありながらもフルボディなスピリッツを生み出しています。




エドラダワー


「エドラダワー」は、スコットランドのハイランド地方に位置する、スコッチウイスキーの中でも特に小規模な蒸留所で生産されるシングルモルトウイスキーです。
その歴史は1825年に遡り、「スコットランドで最も小さな蒸留所」として長い間親しまれてきました。「エドラダワー」とは蒸溜所のそばを流れる「エドレッドの小川」または「2つの小川の間」といった意味からとられたとされています。
エドラダワーのウイスキーの最大の特徴は、手作業にこだわった伝統的な製造方法と、豊かで個性的な味わいにあります。同蒸留所では、近代的な大規模生産ではなく、19世紀から変わらない伝統的な設備を使い続けています。
小型の銅製ポットスチルや木製の発酵槽が活躍し、少量生産だからこそ可能な丁寧な製造プロセスが守られています。このような製法により、エドラダワーのウイスキーは濃厚でありながらもスムーズな味わいを持つ、独特のキャラクターを生み出しています。
そのフレーバーは、リッチで複雑な甘さとスパイシーさが際立ちます。熟成にはオロロソシェリー樽が多用され、ダークチョコレート、ドライフルーツ、キャラメルのような深い甘みが楽しめます。
アバフェルディ


「アバフェルディ」は、スコットランドのハイランド地方に位置する蒸留所で、ディワーズのブレンデッドウイスキーの核となるモルトウイスキーとして知られています。
1898年に創設されたアバフェルディ蒸留所は、ジョン・デュワー・アンド・サンズ社によって設立され、現在でもその豊かな伝統と品質を誇っています。
アバフェルディのウイスキーは、ハイランド地方ならではの穏やかでバランスのとれた特徴を備えています。その香りと味わいには、蜂蜜や熟したリンゴ、洋ナシのような果実味があり、オーク樽由来のバニラやスパイスのニュアンスが絶妙に調和しています。
アバフェルディ蒸留所の水源は、水の神のプールと呼ばれる「ピティリー川」で、豊富な鉱物を含むこの水がウイスキーに特有の深みを与えています。また、長めの発酵時間を取り入れることで、発酵の過程で生成されるエステル類が、果実のような明るいアロマを際立たせています。


ロッホローモンド


「ロッホローモンド」は、スコットランドのハイランド地方にある独特な蒸留所で、その多様性と革新性によってスコッチウイスキーの世界においてユニークな地位を築いています。ロッホローモンド蒸溜所はスコットランド最大の湖「ローモンド湖」の畔に位置しており、蒸溜所の名前もこの湖からつけられています。
この蒸留所の最大の特徴は、その多様な蒸留設備と製造プロセスにあります。一般的な銅製ポットスチルだけでなく、ローモンドスチルという特殊な蒸留器を使用しており、これにより蒸留過程で異なるスタイルのスピリッツを生産できます。
さらに、グレーンウイスキーも製造しているため、シングルモルト、シングルグレーン、ブレンデッドのいずれも自社で完結して作ることが可能です。この多様性が、ロッホローモンドが他の蒸留所と一線を画す理由の一つです。


グレンゴイン


「グレンゴイン」は、スコットランドのハイランド地方に位置する蒸留所で、穏やかでエレガントなシングルモルトウイスキーを生産することで知られています。
グレンゴイン蒸溜所は、ハイランドとローランドの境界線がちょうど蒸溜所内を通っているという珍しい蒸溜所で、どっちにするか揉めた蒸溜所でもあります。
1970年代まではローランドモルトとして販売されることもあったようですが、北側(ハイランド側)から仕込み水を引いていたため、現在はハイランドモルトとされています。
グレンゴインの最大の特徴は、伝統的な蒸留方法と徹底したこだわりです。
蒸留にはノンピートの大麦が使われ、ウイスキーに一切のスモーキーフレーバーを加えないことが徹底されています。これにより、ピートスモークの影響を受けない、ピュアで繊細な味わいが特徴的です。
また、グレンゴインはスコットランドで最も遅いスピリッツの蒸留速度を誇り、丁寧にゆっくりと蒸留することで、滑らかで奥行きのあるスピリッツが生み出されています。
熟成には高品質なオロロソシェリー樽が主に使用され、その結果、ウイスキーにはリッチなフルーツケーキやドライフルーツ、スパイス、キャラメルのような深い甘みが与えられます。
まとめ
今回はハイランドモルトについてまとめ、おすすめ銘柄を9つ紹介しました。
ハイランドはスコットランド6大生産地域の中でも最も広大な地域であるため、味わいの特徴は蒸溜所によって様々です。今回ご紹介した銘柄を以下にまとめました。
イメージ | 銘柄 | 代表作 | 商品リンク | 特徴 |
---|---|---|---|---|
![]() ![]() | グレンモ―レンジィ | グレンモ―レンジィ10年 | Amazon | 蒸留機の高さがキリンとほぼ同じ、オレンジのような柑橘の風味 |
![]() ![]() | クライヌリッシュ | クライヌリッシュ14年 | Amazon | 若干スモーキーで、ワクシーでオイリー、ディアジオ社のクラシックシリーズの1つ |
![]() ![]() | トマーティン | トマーティン12年 | Amazon | 非常にフルーティー、元世界最大規模の蒸溜所 |
![]() ![]() | オールドプルトニー | オールドプルトニー12年 | Amazon | 海のモルト |
![]() ![]() | グレンドロナック | グレンドロナック12年 | Amazon | シェリー樽ウイスキーの名門 |
![]() ![]() | エドラダワー | エドラダワー10年 | Amazon | スコッチ最小規模の蒸溜所、手作りの伝統製法にこだわる |
![]() ![]() | アバフェルディ | アバフェルディ12年 | Amazon | ハチミツやリンゴの濃厚な甘み、デュワーズのキーモルト |
![]() ![]() | ロッホローモンド | ロッホローモンド12年 | Amazon | モルト原酒とグレーン原酒を両方造っている |
![]() ![]() | グレンゴイン | グレンゴイン10年 | Amazon | ハイランドの境界線に位置する蒸溜所 |
多種多様の個性の中から、お好みの一本を探していただければと思います。
それでは、良いウイスキ―ライフを。





