皆さんは、「ローランドモルト」という言葉を耳にしたことはありますか?
「ローランド」は、スコットランドを6つに分けたウイスキーの主要生産地域のひとつです。他にも、ザ・マッカランやザ・グレンリベットで知られるスペイサイド地域や、ボウモアやラフロイグが象徴的なアイラ地域などがありますが、ローランドもその一角を担っています。
ローランドといえばグレーンウイスキーの生産地という印象を持つ方が多いかもしれません。しかし、かつては数十ものモルト蒸溜所が稼働していた地域であり、モルトウイスキーの歴史を語る上でも欠かせない存在です。現在も残っている蒸溜所はかなり少ないですが、近年では新たな蒸溜所が続々と誕生しており、再び注目を集めつつあります。
今回は、飲みやすく繊細で軽やかな味わいが特徴の「ローランドモルト」を徹底解説し、おすすめの銘柄をご紹介します。ぜひ最後までお楽しみください!
ローランドモルトとは


「ローランドモルト」は、スコットランドの6つの主要なウイスキー生産地域のひとつであるローランド地方で作られるシングルモルトウイスキーを指します。
この地域は、スコットランドの南部に位置し、広大な平野が広がる地形が特徴です。その地形や気候が、ローランドモルト特有の軽やかで繊細な味わいを育んでいます。
ローランド地方とは
スコットランドは、歴史的に文化や民族の違いから北部と南部に分けられていました。その南部に位置するのがローランド地方であり、北部にあたるハイランド地方と対を成しています。
現在では、東のダンディーと西のグリーノックを結ぶ想定線の北がハイランド、南がローランドと分類するのが一般的です。
ローランド地方には首都エディンバラやグラスゴーといったスコットランドの主要都市があり、イングランドに近い地理的な特徴から経済の中心地として発展を遂げてきました。この豊かな経済基盤により、スコットランド全体を支える重要な地域として知られています。
しかし、この地理的・経済的な背景が、ローランド地方のウイスキー産業の衰退に影響を及ぼしたとも言われています。経済的に恵まれていたことから、伝統的な技術よりも効率や技術革新が重視される傾向が強まり、その結果、長い歴史を持つウイスキーづくりの文化が失われてしまったと考えられています。
ライトな口当たりと麦の甘みが特徴


ローランドモルトは、ハイランドやスペイサイドのウイスキーと比べて、はるかに軽やかで繊細な味わいが特徴です。フルーティーでフローラルなアロマに加え、麦芽由来のほのかな甘さが香り、飲みやすさに優れています。
この地域の蒸溜所の中には、オーヘントッシャンやローズバンクのようにアイリッシュウイスキーの製法に影響を受け、3回蒸溜を採用しているところもあります。スコッチウイスキーは2回蒸留がほとんどですが、3回蒸溜を行うことで、不純物がさらに取り除かれ、ウイスキーの味わいが一層スムースで洗練されたものとなります。
ローランドモルトおすすめ銘柄3選
グレンキンチー


「グレンキンチー(Glenkinchie)」は、スコットランドのローランド地方に位置する蒸溜所で、その繊細で軽やかな味わいが特徴です。1837年に設立されたこの蒸溜所は、エディンバラから約24キロの距離にあり、「エディンバラのモルト」としても知られています。ローランドモルト特有のスムーズで優しい口当たりを持ち、シングルモルトウイスキー愛好家や初心者の方にもおすすめのブランドです。
グレンキンチーのウイスキーは、伝統的なローランドスタイルを代表するもので、通常は軽やかでフローラルなアロマが特徴です。その製法の一環として、背の高いポットスチルが使用され、蒸留過程で雑味が取り除かれることで、クリーンで滑らかな仕上がりが実現します。
グレンキンチーの代表作としては、「グレンキンチー12年」が挙げられます。グレンキンチー12年は、筆者自身もかなりお気に入りの銘柄で、とにかくハイボールとの相性が最高なんです。グレンキンチーはライトでありながら、香りはフローラル、味わいは少し焦がしたバニラトーストのような味わいと、後味にハチミツのようなコクを感じます。
この甘さと繊細さが両立された絶品のハイボールは是非みなさんにも試してもらいたい一品です。バーで見かけた際には是非試してみてください。また、ボトルでも5,000円を切りますので、シングルモルトの中でも比較的試しやすいと思います。


オーヘントッシャン


「オーヘントッシャン(Auchentoshan)」は、スコットランドのローランド地方に位置する蒸溜所で、ローランドの中でもおそらく最も日本で有名な銘柄です。オーヘントッシャンはサントリーが所有する蒸留所で、大都市グラスゴーの西のはずれにあります。オーヘントッシャンの名前はゲール語で「野外の小さな角地」を意味し、自然豊かな土地を思わせる趣があります。
1823年に設立されたこの蒸溜所は、「三回蒸留」の製法で知られています。通常のスコットランドウイスキーが二回蒸留で作られるのに対し、オーヘントッシャンではすべてのウイスキーが三回蒸留されています。このプロセスによりアルコール度数が高くなり、不純物がさらに取り除かれるため、軽やかでエレガントな仕上がりとなります。
オーヘントッシャンのウイスキーは、軽やかでフルーティーなアロマ、バニラやシトラス、時にはナッツやスパイスのニュアンスが特徴です。ラインナップの代表作には、主要シリーズである「12年」やバーボン樽、オロロソ樽、ペドロヒメネス樽の3種類の樽を熟成に使用した「スリーウッド」などがあります。




ブラッドノック


「ブラッドノック(Bladnoch)」は、スコットランド南部のローランド地方に位置する、最も歴史あるモルト蒸溜所の一つでありながら、近年その復活と再興が注目を集めています。1817年に設立されたブラッドノックは、スコットランド最南端の蒸溜所の一つとして知られ、200年以上にわたりウイスキーの生産を続けてきました。
長い歴史を持つブラッドノック蒸溜所は、20世紀に入ってからオーナー変更や設備の撤去など、不遇の時代が続きましたが、2015年にオーストラリア人実業家デヴィッド・プライアー氏によって買収され、復活を遂げました。
彼のビジョンにより、ほぼすべての設備が入れ替えられ、蒸溜所は現代的な施設へと生まれ変わり、持続可能性を重視した製造プロセスが採用されています。蒸溜は2017年に再開されました。
マスターディスティラーには、スペイサイドの「シングルモルトのロールスロイス」として知られるザ・マッカランでマスターディスティラーを務めていたニック・サヴェージ博士が2019年に就任しました。
ボトルデザインも一新され、伝統と現代が融合した新たな革命が期待される銘柄です。
ローズバンク


「ローズバンク(Rosebank)」は、スコットランド・ローランド地方に位置する蒸溜所で、かつて「ローランドの王」とも称される名門のウイスキー銘柄です。その名前は、蒸溜所近くに咲いていた多くのバラに由来しており、繊細で華やかな風味が特徴です。
ローズバンク蒸溜所は、かつてローランド地方の象徴的な蒸溜所の一つでしたが、1993年に閉鎖され、その後長い間ウイスキー市場から姿を消していました。しかし、2017年にインディペンデントボトラーの「イアン・マクラウド・ディスティラーズ」によって買収され、復活への道が開かれました。伝統的な製法を守りつつ、現代的な設備を導入した新しいローズバンク蒸溜所は、2023年に正式に操業を再開しました。
ローズバンクのウイスキーも、オーヘントッシャンと同様に三回蒸留を採用しており、非常に滑らかでクリーンな味わいが特徴です。さらに、ローズバンクのウイスキーはローランド特有のフローラルでフルーティーな風味が楽しめます。
ローズバンク蒸溜所は、フォース & クライド運河沿いに位置し、30年ぶりに生産が再開されました。最初の樽が充填され、熟成が進められているというニュースも届いており、今後の展開に多くのウイスキー愛好者の注目が集まっています。
まとめ
今回はローランドモルトについて徹底解説し、おすすめ銘柄を紹介しました。
ローランドモルトは、スコットランド南部のローランド地方で生産されるシングルモルトで、銘柄は非常に少ないものの、ライトな酒質で麦の風味が感じられるものが多いです。
また、ローズバンクやブラッドノックなど、近年は閉鎖状態だった伝統的なローランドの蒸溜所が次々と復興しており、今後の展開から目が離せない地域となっています。
さらに、ハイランド地域と肩を並べる一大地域として再び脚光を浴びる日も、そう遠くはないかもしれません。
それでは良いウイスキーライフを。
イメージ | 銘柄 | 代表作 | 商品リンク | 特徴 |
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![]() ![]() | グレンキンチー | グレンキンチー12年 | Amazon | 「エディンバラのモルト」、麦の甘み |
![]() ![]() | オーヘントッシャン | オーヘントッシャン12年 | Amazon | ローランドで一番有名、三回蒸留、非常にクリーンでフルーティー |
![]() ![]() | ブラッドノック | ブラッドノック ヴィナヤ | Amazon | ローランド最古の蒸留所の一つ |
![]() ![]() | ローズバンク | ローズバンク12年 | Amazon | 「ローランドの王様」、3回蒸留 |





